スマホに関連するニュースを調べていると米中貿易摩擦が気になってしまいます。Huaweiの最新スマホ「P 40」は最高のカメラ性能を持ちながら、Googleアプリがサポートされない(GMS非搭載)という影響がスマホというデバイスにも出ています。スマホに関係する米中貿易摩擦について深堀してみます。
ポイントは以下の3つです。
- Huaweiは9月以降、半導体(チップ)の調達に苦戦しそう。新商品が作れない可能性もある。
- サムスン電子の半導体部門は韓国経済を支える柱だけど、中国への供給に先行き不安
- 中国メーカーのXiaomiやOPPOの規制はなさそう
半導体製造のTSMCが米規制を順守
世界最大手の半導体受託製造をしている「台湾積体電路製造(TSMC)」は2020年7月の事業説明会にて「アメリカの規制を順守する」との表明後、売り上げの14%に及ぶ大口顧客であるHuaweiからの新規受注を受けないことも説明されました。これによりHuaweiには9月以降、TSMCから仕入れができなくなりました。
TSMCとしても、14%の売り上げが減るのは大損害…のはずが、その影響はなさそう。通信の5Gに関わるチップ製造のニーズ拡大で足元の業績4-6月の営業利益は79%増となっています。TSMCはApple、Qualcommなど米企業が大口顧客にいて、次に発売されるiphone12は秋口発表との噂があるが5G対応機種が出そうだ…Huaweiとの取引がなく減産された分の一部はAppleが埋めているかも知れない。TSMCはアメリカのアリゾナにて生産工場を建てることを発表していて、アメリカとの何かしらの合意を感じてしまいます。
ちなみに世界最高水準の半導体が作れる企業は、米Intel、台湾TSMC、そして韓国のサムスン電子と言われています。
*TSMCは半導体の受託製造の最大手。HiSilicon(Huawei)やApple、Qualcommなどは半導体の開発設計は自社で行うファブレス企業と呼ばれ、製造のみを専門で行うファウンドリ企業のTSMCに発注し行っている。半導体の設計と製造は別で行われるのが近年一般的である。設計と製造の技術は別なのだが、設計も製造もできるのはIDM(Integrated Device Manufacturer)のIntelとサムスン電子など。
Huawei半導体の仕入れ先探し
半導体の仕入れができないとスマホや通信機器は作れません。Huaweiが半導体の仕入れ先として、まずコンタクトをしたのはサムスン電子との噂があります。しかしながら、米中貿易摩擦の最中、アメリカからの圧力もありHuaweiからの申し入れにHuaweiは難色を示したようです。その結果、Huaweiは台湾のMediaTekから半導体の調達をしている。MediaTekのチップ搭載というと安価なモデルのスマホが多く、日本で見かけるものだとコスパで有名なUMIDIGIのスマホなど。MediaTekは台湾の企業だが、規模の問題かTSMCのようにアメリカからの規制協力はないようでHuaweiからの受注を受けている。
中国では仕入れを外からしないでも済むよう、半導体量産の体制を急いでいて中国の半導体企業は資金調達し投資を進めています。そもそもHiSilicon(Huawei)の半導体の開発設計は世界トップクラス。半導体の開発設計の技術は中国にあるので、半導体の製造ができてしまうと5G関連特許を多く持つ中国は、世界の5G分野を制する可能性があります。
Huawei規制の恩恵がなかったサムスン電子
韓国経済は現在多くの業種で業績が悪化し、停滞模様の中、サムスン電子の半導体事業は利益を大きく伸ばしています(4-6月で前年同期比+23%)。自動車のヒュンダイ、日本でも家電やスマホでおなじみのLG電子も業績が落ち込む中、サムスン電子の半導体事業は韓国経済を支える大きな柱になっています。
そんな中、サムスン電子の半導体製造の重要拠点(サムスン中国半導体法人)は中国・西安にあるものの、アメリカからの圧力もありHuawei規制の恩恵はなかった。サムスン電子は半導体ばかりでなく、メモリの製造もしておりアメリカの顧客も多く、Huaweiに半導体を提供することで米中摩擦に巻き込まれると痛手も大きい。サムスン電子には中国の顧客もいるので、今後のアメリカの規制によっては、半導体の売り上げを落とすかも知れません。大黒柱の不調は韓国経済の影響も大きいそうです。
Huaweiは今後大丈夫なのか?
現在中国では半導体製造企業に対し投資を進めています。代表格は中国の半導体受託製造大手のSMIC(中芯国際集成電路製造)。2020年の調達額はグループ企業含め1兆円規模。中国では半導体バブルと呼ばれています。ただ技術水準は現状低く、世界最高水準から5年程遅れているとのことで、TMSCのレベルに追いつくまでにまだまだ時間がかかりそう。
実際SMICはHuaweiが必要とするチップの製造が出来ないようです。9月以降はMediaTekから…と言っても、実はMediaTekは受託製造のファウンダリではなく、設計を行うファブレス企業。結局MediaTekのチップはTSMCが作っている。結局HuaweiはTSMCが作るチップを使っているのだ…これは何で今規制が掛からないのか?今後の仕入れに保証がない状態が続きます。
広がるHuawei包囲網
Huaweiへの規制はアメリカの圧力のせいで、欧州でも起こっています。
イギリス政府は国内の通信事業者に対し2020年末までにHuaweiの5G製品の購入を止めさせ、2027年までにはHuawei製品のすべてを排除するよう通達をしました。この件に対しHuaweiはプレスリリースを出しています。
参考:英国政府の決定に関する当社ステートメント(中国時間7月14日付)https://www.huawei.com/jp/news/jp/2020/hwjp20200715u
Huawei公式より
一方中国側は、イギリスに続きEUも排除を決定した場合、フィンランドのNokiaとスウェーデンのEricssonへ報復措置の排除を検討しているようです。Nokia、Ericssonとも5Gの世界特許数上位の国で通信機器メーカーです。
この中国の報復措置のニュースの後にフランスではHuawei機器を調達した通信業者は使用免許の更新をしない旨の通達をしたとの関係筋の話。実質的なHuawei排除です。EU加盟国フランスに追随する国が現れるのか気になるところです。アメリカから排除の圧力を掛けられているので次は日本だったりして…
XiaomiやOPPOはどうなのか?
XiaomiやOPPOは完全な民間企業で、中国政府の資本が入っていないので規制の対象にはならないと思われます。先日(2020年7月21日)行なわれたOPPOの新商品発表会ではGoogle社からの応援メッセージがありました。OPPOを「世界で最も急速に成長しているAndroidパートナー」と紹介しています。これを見るとアメリカの規制から遠い存在の様に感じてしまいます。
また、XiaomiやOPPOはスマホ(家電)メーカーで、技術的なレベルで言うと基地局周りの通信機器を手掛けるHuaweiとは通信技術の点で明らかな差があります。その辺も規制対象になりにくいのかも知れません。
ただ、インドと中国の間に問題があり、両社ともインド市場での販売規模は大きいので、そこは懸念材料です…それは別の機会に。
以上、最近の米中貿易摩擦について調べてみました。
そもそもHuawei規制が起きた理由など関連記事は以下です。
関連記事:スマホメーカー事件簿 2020年5月版